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最高裁判所第三小法廷 昭和39年(オ)1238号 判決 1966年12月20日

上告人

クラーレンス・エス・ヤマガタ

上告人

ハリー・タイラ

右上告人両名訴訟代理人

芦苅直巳

石川悌二

被上告人

横川成人訴訟承継人

横川アサコ

(外三名)

右被上告人ら四各訴訟代理人

牧野寿太郎

被上告人

丸菱物産株式会社

右代表者代表清算人

岡本忠夫

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする

理由

上告代理人芦苅直巳、同石川悌二の上告理由第一について。

原判決は、上告人らに対する被上告会社の本件借受行為が同会社の代表取締役としての訴外石黒八郎によつてなされたものであることを認定したうえ、被上告会社においては昭和二六年一〇月五日右石黒を代表取締役より解任し、同月一七日その旨の登記を経たことが認められるから、以後同人は被上告会社を代表する権限を失つたものというべきであるとして、上告人ヤマガタに対する所論(ハ)および上告人タイラに対する(イ)(ロ)(ハ)全部の借受行為はすべて右石黒が被上告会社を代表する権限の消滅後になされたものであつて、その効果は被上告会社に及ばないと判断している。

これに対し論旨は、株式会社の代表取締役の解任は、その解任決議が取締役会においてなされ、その旨が右代表取締役たりし者に告知されてはじめて効力を生ずるものであつて、解任決議がなされ、その旨の登記を経たからといつて右告知のないかぎり解任の効果は生じないものと解すべきであるとして、原判決の法律解釈適用の誤りをいう。

しかし、株式会社における取締役会の代表取締役解任の決議は、代表取締役の会社代表機関たる地位を剥奪するものであつて、右決議によつて右機関たる地位が失われることの効果として、被上告会社を代表する権限も当然消滅するものと解するのを相当とし、所論告知をまつてはじめて解任の効果が生ずると解すべきではない。従つて所論各借受行為が右石黒の被上告会社を代表する権限消滅後に同人によつてなされたものであつてその効果が被上告会社に及ばないとした原審の判断は、正当ということができる。

よつて、論旨は採用できない。

同第二について。

記録を調べても、所論昭和三二年九月一八日付準備書面に基づく陳述は第一審および原審の口頭弁論においてなされていないし、所論表見代理ないし表見取締役に関する主張が原審でなされた事蹟は見当らない。従つて、右主張について原審が判断を示さなかつた点に所論違法はない。

同第三について。

所論(1)は、被上告会社の代表清算人三輪寿壮が上告人らの本件債権を承認したとの事実を主張し、所論(2)は横川成人が被上告会社の代理人として本件債務を承認したとの事実を主張するが、右はいずれも原審の認定に反することをいうものであつて、採用できない。

所論は、採証法則違反、経験則違反をいうが、原審に所論違法はない。所論の実質は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定につき異論を述べるにすぎず、採用のかぎりでない。

よつて、民訴法三九六条、三八四条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(柏原語六 五鬼上堅磐 田中二郎 下村三郎)

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